夏期講習会の前半が終了しました。この前半の授業の中で一斉指導教室の全中3の授業中、20分という短い時間でしたが会長・河浜が講話を行いました。そして、その講話は多くの生徒に感銘を与えたようです。そこで、スケッチブックの巻頭に収めたく、講話の内容を原稿に起こしましたので、ここに掲載いたします。

 

河浜:中3のみなさん、今日は20分の時間をとって講話をいたします。何故、今日という日を選んでみなさんにお話をするのか、それには意味があります。
みなさんに質問いたします。みなさんの人生はいつ始まりましたか?もっと詳しく言うと、みなさんが「自分の人生を生きよう」と思って人生を歩み始めたのはいつですか?

おそらくは「自分の人生」なんて考えて小学校を歩んできた人は一人もいないはずです。小学生って子供ですから、何も考えずにただ生きていただけではないですか?「俺の人生は?」なんて考えている小学校1年生がいたとしたら、ちょっと気持ち悪いくらいです。(笑)
みなさんはたまたま生まれた場所・育った場所で自然に通う小学校が決まっており、たまたまそこで知り合った友達と自然に今日までを歩んできたはずです。わたしも同じです。わたしは小さい頃貧しい家庭で育ちました。当時の河浜の家は、元々一つの家庭が住んでおられた木造3階建ての家の2階部分だけを間借りしていたんです。1階にも3階にも別の家庭が住んでおられました。だから我が家では、3軒の共同台所・共同トイレしかありませんでした。風呂は銭湯・河浜の部屋は雨漏りすることもある屋根裏部屋でした。でもちっとも辛くはありませんでした。だって、そんな状態が生まれてきた自分に与えられた環境であり、何の疑問もなく、特にそのことをどうのこうのと考えることもなく、それが当たり前のように過ごしていました。むしろ、父と母の愛情に満ちた家庭で育てられたことは楽しいことでした。共同台所で、3軒の奥さんたちが並んで夕飯の支度をしていると、ちょっとつまみ食いをさせてくれたり、激しい雨が降る日にはきゃあきゃあ言いながら雨漏りの下に「たらい」や洗面器を置いていったり・・・それは何にも考えずに済む幸せなのんびりした日々だったのかもしれません。

ところが中3になったある日、「お前はどこの高校に行きたいんか?」「お前は大きくなったら何になるんや?」という自分の人生に関わる問いを浴びせかけられたんです。それはちょうど中3になった、みなさんの今に当たる時期でした。

すなわち、みなさんは今という時期に初めて自分自身の意思で自分の人生の扉を開こうとしているんです。しかも、それは自分の力で開かねばなりません。みなさんは今、自分で切り開く人生のスタートラインに立ったのです。

さて、そんなときみなさんは、この塾に通っています。この塾ではもちろん合格するための知識を伝え、問題を解く方法を教えます。それはそういったことを伝えないと合格しないからです。みなさんを合格する状態にして試験会場に送り出すことがわたしたちの仕事です。でも、そんな知識の多くを皆さんはいずれ忘れてしまいます。今ならっている化学式や歴史の知識などをいつまでも覚え続けている人はほとんどいません。たとえば自分の職業に関係のある知識や社会で生きていくために必要な知識は大人になっても忘れないでしょう。でも多くの知識は頭に残りません。

ただ、高校入試の時期に「一生懸命に頑張った事実」・頑張ったことによって得られる「努力の方法」・頑張った事実によって得られる「自信」は、これから先何物も奪うことのできない経験となって、みんなの心に残るはずなのです。
この塾では、多くの卒業生が卒業後もつながりを求めて訪ねてきます。先日も卒業生同士のカップルが、婚姻届の立会人の印を押してほしいとやってきました。彼らは言います。「ここは、僕らの頑張り人生をスタートした場所です。」と・・・。

そうです。わたしたちは、努力家を育てたい。そして、そういった頑張り人生のスタートラインがこの塾であってほしい。それがわたしたちのつくりたい塾であり、中3という「自分で扉を開く人生のスタート」で改めて皆さんに意識してもらいたいことです。

自分の力で歩み始めるこの時期、学習共同体というこの塾で、高らかに宣言して自分の人生を始めようじゃないですか。今をそのスタートラインにしようじゃないですか。努力する人生のスタートライン、それが学習共同体という「情熱の学び舎」なのです。